お口まわりのトラブルを総合的に診療
口腔外科とは?
口腔外科診療では、抜歯、顎嚢胞挺出、事故による歯牙・歯槽骨の破折などの観血的処置、歯牙の脱臼、顎骨骨折の整復を行います。そのほかにも、歯・顎・口腔粘膜をはじめ、それらに隣接している組織に見られる先天性および後天性の疾患について、症状や状態を把握して診断・処置を行います。顎関節症などもこちらにあたります。
歯根嚢胞の診断の話
歯科医師は、顎嚢胞のひとつである、歯根嚢胞の診断をするにあたり、当然、レントゲン診断を行うわけですが、そのときに撮影するレントゲンとして、パノラマレントゲン写真と1歯ずつ診断を行うデンタルレントゲン写真があります。
今回は、デジタル・パノラマレントゲン像(2次元的画像)での診断結果とCT撮影(3次元的画像)の当医院にて導入しておりますシンプラント3D解析画像との診断結果の比較をしてみたいと思います。
まずは、デジタル・パノラマレントゲン像からですが、当院にて手術を行いました右上に1本、左上に3本のインプラントが埋入されていることが確認できます。さて、上顎の歯牙の根の先に歯根嚢胞と呼ばれる膿(ウミ)の袋を持った歯牙が3本ございます。どの歯牙に膿の袋があるか? このレントゲンから判断できますでしょうか?
答えは、CT画像の水平断をご覧ください。赤い矢印の先にあります。画像上で白い骨の境界線の内側に灰色の部分の中に画面上で一番白く楕円形やひょうたん型をした物が歯根です。その周りの灰色の部分こそ歯根嚢胞です。
CT画像でこれほどはっきりと見える歯根嚢胞画像でも一般的な歯科医院で用いられております、パノラマレントゲン(診断できる場合には、CT画像と同じように灰色の透過像が見られます)では、ほとんどわからない場合もある良い例だと思います。この、CT画像の青色の線で垂直的に切り取った画像がCT画像垂直断です。
この画像には、歯根嚢胞と歯根と骨との境目に境界線を入れさせていただきました。ご覧いただけますように、この歯牙は歯根嚢胞にスッポリと包まれており、膿の袋の上に浮いているだけの状況が手に取るようにご理解いただけると思います。
CT画像水平断 | CT画像垂直断 |
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このように、厳密な診断を要するケースには、2次元的な画像診断では、診断しにくい状況が現実にはあるということが、ご理解いただけたかと思います。今後、歯科医療におきましても、口腔領域の診断(口腔癌・顎嚢胞など)やインプラント手術・歯牙移植術・水平埋伏智歯抜歯・歯根嚢胞摘出術など口腔外科手術のより正確な診断を要求される場合が増えると思います。当院では、それに応えられるような診療体系を構築しております。
歯根嚢胞摘出術
歯の神経を取り除いた治療(根管治療)をお受けになった歯やむし歯などで、自然に歯の神経が死んでしまい神経が腐ってしまった場合などに、歯の根の先に炎症を起こして、歯根嚢胞と言う膿の袋を作ってしまう場合があります。
この場合、再根管治療を行うのが第1選択となりますが、再根管治療を行えないよう場合(きれいなセラミッククラウンなどの治療をお受けになっていて、外すことが困難な場合など)や根管治療を施しても経過が良くない場合に、歯根尖切除手術という唇側の歯肉の一部を切開して、感染を起こしてしまっている根尖部と歯根嚢胞を摘出することがあります。
顎関節症・歯ぎしりについて
最近、顎が痛い、咬み合わせに違和感があるので顎関節症ではないかと、不安を感じて来院される患者様が急増しております。そのような患者様のお口の中を拝見しますと、上下前歯の糸切歯の先がすり減って、先が平らになってしまっている方や糸切歯から奥歯にかけての歯の根元の歯頚の部分がむし歯でもないのに、わりと鋭利に上下左右連続して削れてすり減ってしまっております。体感的な症状として、朝起きたらなんだか顎がだるく感じたりという、顎関節症の前駆症状を呈している方を多数拝見いたします。
このような症状の方の大多数は、歯ぎしりや食いしばりを睡眠中にしており、音が出れば歯ぎしりとわかる方もいれば、音のしない歯ぎしりや食いしばりをされている方も多く見られます。 症状がはっきりでない患者様には、無理して治療はおすすめしておりませんが、こういう方の治療法として「ナイトガード」と言う歯ぎしり・食いしばりの予防処置があります。
「ナイトガード」は、ボクシングやラグビーの選手が打撲から歯を守るためのマウスピースを、歯にぴったりフィットするように薄くしたプラスチック製のシンプルなマウスピースです。夜お眠みいただくときに、上顎に装着していただくわけですが、少し違和感が最初はあるようです。これさえ慣れていただけましたら、歯の枕として無意識な睡眠中の不可抗力で猛烈な咬合力に耐えて、咬み合わせを受け止めてくれます。プラスチックですので、今までは、上下の歯同士が擦れ合ってキリキリといやな音を立てていたわけですが、プラスチックがやさしく受け止めてくれますので、歯が削れてしまうことはありません。ナイトガードが徐々に削れて行きます。
365日毎晩歯ぎしりされる方もいれば、周期的に歯ぎしりをして、顎の状態が悪くなる方も多くいますので、その人に合った使い方をしていただくことになります。プラスチックが削れて、穴が開いたら作り直しとなります。とにかく、歯は削れて形を崩してしまうと元の形に戻すことはできません。早期対処と早期治療が有効です。お心当たりがございましたらお気軽にご相談ください。
ナイトガード
閉鎖型催眠時無呼吸症候群(OSAS)治療について
閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS) とは、上気道の閉塞によっておこる無呼吸・低呼吸状態になる症状のことで、睡眠時無呼吸症候群の原因の95%を占めています。当院では、ナイトガードの作成の応用として、上下顎でマウスピースを作らせていただき、舌根沈下を抑制するために下顎前方位で、下顎位を固定してしまう方法にて治療を行っております。
カスタムスリープエイド
親知らずについて
親知らずとは第3大臼歯(6歳臼歯の2本後の歯)、中央の歯から数えて(抜いてある歯や元々生えてこなかった歯を含め)8歯目の歯のことを指します。「親知らず」と名前がついていますが、ほかの歯と比べ歯の構造上は何ら変わりありません。ただ、一番後ろの場所に最後に生えてくるために、トラブルの原因となる場合があります。上下左右に4本ある場合から、1本もない場合まで個人によってさまざまです。
痛みの原因について
むし歯による歯髄炎・歯根膜炎
歯の構造は、外側からエナメル質や象牙質、そして歯髄(神経)があります。当然、むし歯になり、深く大きくなり、歯髄までむし歯が到達しますと歯髄炎を起こし強い痛みを起こします。この時期を通り越えますと、歯髄は壊死してしまいます。歯髄炎の痛みはなくなりますから、良くなったかと思い込んでしまいますが、実は壊死を起こした歯髄は、腐ってしまい、細菌の温床となってしまうのです。
この歯の中で増殖した細菌が、歯根の先端から歯槽骨ににじみ出るように体内に侵入してきますと歯根膜炎を引き起こし、歯茎の奥のほうが痛くなったり、歯が浮いて、歯をたたくと痛みを感じるようになり、この時期を通り越えますと、歯茎の奥のほうが腫れてきて、膿が出てきます。
智歯周囲炎
智歯とは親知らずのことです。親知らずは最後に一番奥に生えてくる歯であるがゆえに、顎の中で生えてくるためのスペースが不足している場合が多く見られ、さまざまな生え方をします。正常な生え方で、ブラッシングができていれば問題を起こすことは少ないですが、歯の一部が歯肉の上に顔を出し、そのほかの部分が歯肉の下に埋まっている状態であれば、本来歯肉の上に生えてくるべき部分が埋もれた状態となり、そこにすき間が存在してしまいます。このすき間に細菌が侵入し、炎症を起こした場合を智歯周囲炎といいます。
炎症がひどい場合は下顎の場合、口の中にピンポン玉を入れたと思うくらいに腫れたり、口が開けなくなったりする場合や、逆に腫れのために口を閉じられなくなる場合があります。
顎関節痛
口を開けたとき、逆に閉めたときに顎関節に痛みが走る状態で、この状態を放置しますと、顎関節症に進行して症状を悪化させます。前駆症状として、口を開閉したときに顎からカクカク音がしたり、引っ掛かりがあったり、朝起床時にお口があきにくいような症状が出ます。
三叉神経痛
顔面部に放散的に痛みが発生する場合があります。いろいろな原因が考えられますので、早期の診断と処置が必要となります。
帯状疱疹
体の免疫力が落ちたときに、三叉神経領域に帯状の発疹とともに、強い痛みが発生します。
親知らずは抜いたほうがいいのか?
1本1本の親知らずの生え方やむし歯の状態によって判断します。従って親知らずだからといって、抜かなければならないことはありません。抜いたほうが良い場合とは次のようなときです。
- 頻繁に智歯周囲炎を繰り返す
- むし歯が大きくなり歯が保存できないときや、位置的あるいは方向的な条件でむし歯治療ができないとき
- 親知らずが手前の歯を押して、歯並びに悪影響を及ぼしているとき
- 親知らずの生え方によって、手前の歯との間にプラークが溜まりやすくなり、手前の歯をむし歯にしてしまったとき
- 親知らずによって周りの歯肉や頬粘膜を傷つけてしまうとき
抜歯について
上顎の親知らずは比較的簡単に抜歯できることが多いのですが、下顎の場合は歯肉の中に埋まっていたり、斜めや横向きに生えていたりするときは、歯肉の切開や歯を分割して抜く場合もあります。
また、抜歯後は腫れることも多いので、歯科医師に状態の説明を受けたうえで抜歯を受けてください。抜歯後は、必要に応じて消炎鎮痛剤や抗生物質が処方されますので服用するようにしてください。
歯牙移植
当院では、抜歯即時の歯牙移植術と、広島大学ティースバンクとの提携で、歯牙の冷凍保存による20年間の長期保存による歯牙移植療法の2つの方法を導入しております。
症例写真は、抜歯即時の親知らずの歯牙移植症例です。歯牙移植術は、口腔外科医局時代より手掛けてまいりました治療法ですので、適応症例さえ間違えなければ、長期安定した経過を得ることができる治療法であると確信しております。歯牙の冷凍保存は、青年期の親知らずや矯正時に便宜抜歯したような歯牙を長期保存して、何らかの原因で歯牙を失ったようなときに、冷凍保存した歯牙を移植するような場合に最適です。お気軽にご相談ください。
歯牙移植前口腔内写真 | 歯牙移植前X線写真 |
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歯牙移植後口腔内写真 | 歯牙移植直後X線写真 |
- 唾を強く吐いたり、強くうがいをしたりしないでください。再出血の原因となります。
- 患部を気にして、指や舌で傷口をさわらないでください。再出血の原因となります。
- 当日は、喫煙・入浴・飲酒・激しい運動は避けてください。再出血の原因となります。
- 麻酔のため約2~3時間、唇や舌がしびれています。唇や舌を咬まないように注意してください。早口でおしゃべりをしたり、早食いをしますと、咬んでしまって、咬傷やタラコのように唇を腫らしてしまうことがあります。
- 投薬されたお薬は、指示通りお飲みください。なお、麻酔が切れて痛みが出たら、早めに鎮痛剤を服用すると痛みが押さえられます。
- 術後は腫れます。一度腫れますと、3~4日腫れは残りますし、皮膚が紫斑や黄斑が出ることがあります。必ず1週間程度で消失します。術後はできるだけ、頬の外側から冷たい氷枕や冷たいタオルで圧迫ぎみに冷やされると、腫れも少なくて済みますので、翌日以降、楽に過ごすことができます。
- もし出血が止まらないときや再出血のときには、慌てずに清潔な脱脂綿やガーゼで患部をしっかり圧迫するように咬んでください。一度咬んでいただきましたら、30分間はしっかり咬んで、圧迫止血を執り行ってください。圧迫止血処置を適切に行っていただけましたら、必ず出血は止まります。どうしても上手くいかないときには、当院の診療時間帯であれば早めのご連絡いただくか、そうでない場合には救急外来での止血処置が必要な場合もあります。
外科処置後の注意事項
~抜歯後・インプラント手術後・外科手術後の注意事項~